「きちんと話すことが人生を決する」ニフティ株式会社 代表取締役社長(兼)経営執行役社長 和田一也さん 上智大学法学部法律学科卒業

和田一也さん / マリー秋沢 / 本谷隆光

  • 聞き手:マリー秋沢(比較文化学部)・本谷隆光(経済学部 平成6年卒)
  • 編集:本谷隆光(経済学部 平成6年卒)

今回はニフティ株式会社代表取締役社長である和田一也さんにお話を伺いました。
コーポレートコミュニケーション室 広報チームの吉冨課長にもご同席をお願いいたしました。

本谷:

和田社長の座右の銘である、「心は行動となり、行動は習癖を生む。習癖は品性を創り、品性は運命を決する」(京都大仙院の庭にある尾関宗園和尚の訓辞)という言葉に感銘を受けました。外国にも意味を同じくする格言がありますね。

和田社長:

「心は行動となる」という部分に表れていますが、やっぱり人間は本音、つまり心で動き、行動するんですよね。そして、行動は続けていればやがて習癖になるでしょう。さらに人が持つ癖というのは、その人の品性・品格というものにとても深く関与する。そして、何より人が持つ品性・品格というものは、それこそその人自身の人生や運命を決する、とてつもなく大事なものだと思うんです。

マリー秋沢・本谷:

なるほど。よくわかります。

和田社長:

では品性・品格とは何なのだろう、と考えてみると、やっぱり学生時代に養われたものが大きく関係すると思います。やっぱり高校や大学など、一番感性が豊かな時代に何をしたかによって、人の器、人間としてのベースができると私は考えていますよ。

マリー秋沢:

上智大学ではどんな学生生活を送られたのですか?

和田社長:

学生運動が真っ盛りで、目的や手段など、もちろん非難されるべき所はあると思うけれど、その中でもきちんとした議論というのはされていて、内容的には大変面白かったんですよね。明治維新の天下国家を語ると同じ気持ちで、権力というものを語ったのを覚えています。その後、皆色々な方面に進んだけれど、とにかくあの頃、「相当話し込んだ」という思い出がありますね。

マリー秋沢:

上智の先輩からそのようなお話を伺うのは大変嬉しいですね。上智の印象と言うと、どちらかというと、議論をぶつけ合うというイメージがあまりないですから…

和田社長:

とんでもないですね(笑)。
我々の頃は全く違います。きちんと話ができる人間が周囲にいるというのはとても大切です。正確な日本語で相手にわかるように話ができるか否かというのは、人生を決しますよ。

本谷:

なるほど。

マリー秋沢:

私も通訳をしていた経験から、身にしみてよくわかります。言葉を正確に使えるかということは、その人の命運を左右しますね。

和田社長:

通事が実権を持ってはいけないとよく言われるんですね。ただし、もちろん言葉が通じなければコミュニケーションはあり得ない。
私が知っているある米国籍のコンピューターメーカーは英語ができる人材が出世した時期と、コンピューターのシステムが本当にわかる人材が出世した時期があるんです。本来あるべき姿は後者でしょう。通訳のできる人材が特に外資系の会社に入ると、残念ながらいわば取り巻きのようになってしまうことがある。汗水を流して働く本当の現場を知らない人が言葉だけを伝えて行くと、最初はほんのちょっとした情報の間違いでも、積み重なるうちに大きな間違いになることがある。
語学に力を入れる大学だからこそ、上智の皆さんには、一つそのことは伝えたいですね。それからもう一つ、日本語をきちんと喋れない人間が外国語を喋っても内容はないということです。これは特にビジネスの世界では大切。胸に刻んで欲しい。

マリー秋沢:

上智学生への大切なメッセージですね。

和田社長:

私の頃は先ほどもお話したような学生運動が盛んな時期。学生運動というのは、色んな方にご迷惑を掛けたけれど、学生時代にあれだけ対決する、反抗するという経験はないんですね。それこそ機動隊と対峙して催涙弾を投げられたりとか(笑)。でも、そういう行動の表面的なアグレッシブさではなく、様々なことを熱く語り合い、学生時代に「何を感じたか」というのがとてつもなく大事だと思います。学生時代の経験にとても感性を刺激されたと実感しますね。

本谷:

実は経鷲会に富士通に勤める後輩がおります。今回のインタビューが和田社長であることを伝えたら、是非お会いしたいと申しておりました。

和田社長:

いつでもどうぞ(笑)。

本谷:

その後輩も申しておりましたが、和田社長と言えば、富士通時代からとにかくその猛烈な仕事ぶりが大変有名ですね。競争とスピードを重視され、西日本新聞に100回通い詰めたエピソードや、ニフティででも土日返上で働くなど、様々な逸話を耳にします。

和田社長:

エピソードだけ取り上げられても困るな(笑)。
でも仕事においては、とにかく「集中する」ということが大切でしょうね。 富士通という会社は何万、何十万という商談の上に成り立っている企業。そこには必ず膨大な数のライバルがいて、勝ち負けがあります。当然その競争には勝たなくては売上が成り立ちません。だから徹底して仕事をし、「集中する」ことが大切です。

ニフティー エントランス

マリー秋沢:

和田社長の猛烈な仕事ぶりや、スピード重視のスタイルなどを耳にして、ちょっと緊張も覚えていたのですが(笑)、先ほどのお話のように議論を重んじておられ、我々後輩にも丁寧にお話しして下さることを大変嬉しく思います。ニフティというこの会社の中で社員の皆さんにも同様にしていらっしゃるのでしょうね。

和田社長:

我々は組織で動いています。私がどんなに頑張っても、1.2人月くらいがせいぜいでしょう。今600人の部下がいます。その人たちが1割多く働いてくれて、1.1人月換算となれば、60人従業員が増えたのと同じことです。部下のモチベーションが上がるというのは、数字で換算しても、とんでもなくすごいことだというのがわかるでしょう。
でも実は数字で考える必要もありません。
上司が部下のモチベーションを上げるために腐心するというのは、マネージメントの基本中の基本でしょう。

マリー秋沢:

なるほど、素晴らしい。

和田社長:

モチベートするというのは色々な手法がありますよね。でも調査してみると、お金であがなえるモチベーションというのは極めて少ない。やはり何より気持ちの部分、つまり、やりがいなど心によるものが大きいんです。
何十年か仕事をし、人を統括することが多くなって行く中で得た教訓は、「部下とどれくらい密接な、本当のコミュニケーションをとれるかが大切」ということですね。

マリー秋沢:

部下の方と飲みに行かれたりもするんですか?

和田社長:

よく行きますよ。そこでは仕事の話はしないんです。ただ飲んで、楽しく騒ぐ、と(笑)。
もちろん若い社員とも行きますね。

マリー秋沢・本谷:

若手にはそれはとても嬉しいでしょうね!社長と直接話せる機会はなかなかないと思いますよ。

吉冨課長:

この間も20代の若手を隣に飲んでいましたね。社員の動向を誰よりも知るのは、実は人事部長よりも社長ではないかと言われています(笑)。

ニフティー オフィス

マリー秋沢:

とても風通しの良い組織なんですね。

吉冨課長:

社長室もいつもドアを開けています。社長はフットワークも軽いので、社内の様々な部署に現れ、社員と話をしていますよ。

和田社長:

とにかく大切なのはお客様、関係者、部下という様々な人たちときちんと話すということです。お客様の所をしっかりと回り、SEや部下としっかりと議論をする。以前ももちろんそうですが、現場の情報をまとめる中間管理職の仕事のやり方は厳しくチェックします。基準に達しなければ何度もやり直しをさせました。
そうやってきちんと議論し、しっかりと話していれば、自然と情報は集まってくる。何より確実なコミュニケーションが仕事の基本なのです。だから先ほど言ったとおり、きちんと話せるということは人生を決するというのは本当です。コミュニケーションがとれなければ情報は入って来ない。

本谷:

なるほど。そんな和田社長にとっての経営哲学とは何でしょう?

和田社長:

「部下を信じ、一緒に汗を流し、信じた方向に突き進む」ということしかないですね。
できるだけどんな部下ともコミュニケーションをとります。600人だけに完全には難しいかもしれませんが、それはずっと続けますよ。

マリー秋沢:

素敵ですね。企業のトップの方がそこまで部下の方と親密なコミュニケーションをとろうとされるのは珍しいケースだと思います。

和田社長:

私は3つの約束というのを明言しています。
1. やりがいを支援する。
2. 現場の声を聴き、理解する。
3. 全てのプロセスで責任を明確にする。
この3つが私の約束なんです。

マリー秋沢:

今の学生へメッセージを頂きたいのですが。

和田社長:

「器をとにかく大きくすること」。
今は繊細な人がすごく多い。ピンチになって自分が追い込まれると本当に参ってしまうような…ちょっとストレスに弱い気がしますね。ストレスと友達になれるくらい、学生時代にストレスを味わっていて欲しい。
そして何でもいいから、そのストレスを上手に解消できる方法論を学生のうちに見つけておいて欲しい。それくらい遊びも知っていて欲しいかな(笑)。
真面目なのは悪いことじゃない。ただ、一生懸命勉強して成績を上げることに終始してしまうより、本来その時期養わなくてはならない感性や経験、ストレスとの対峙の仕方などを身に付け、大学4年間本当に楽しかったと卒業してくる人間の方が、我々としてはよっぽど使いやすい。
大学で学んだ知識だけでは、実社会での仕事にはまだまだ通用しない。だから大学時代は色々な経験をし、これから様々なことを吸収できるよう、器を大きくして欲しいんです。例えば学生さんには、本当に何かをしたいなら、夏休みを丸々使ってサイトを一つ立ち上げてごらん、ニフティに来ればマシンごと貸してあげるよ、とも言っていますよ(笑)。

本谷:

是非上智の学生にも声を掛けて下さい(笑)。きっと良い経験になりますよ。

吉冨課長:

ニフティでは、2007年10月から、産学協同に近い新しいプロジェクトも始めています。今後も様々な新規プロジェクトに着手していく予定ですよ。

本谷:

なるほど。今までニフティと言えば通信界の大御所というイメージが強かったのですが、現在「ニフニフ動画」、「@niftyしたい!やりたい!」、「アバウトミー」などのマッシュアップ、セマンテックWeb指向の新規プロジェクトも立ち上がり、大きな変化が起きている印象を受けます。

和田社長:

ニフティという会社は設立されてから20年経ちますが、インターネットの節目の時期、Yahoo!にも楽天にもなれたし、はてなにもなれたと思うんです。確かにISP事業はいつも堅調で、現在でもそれは変わらない。しかし、ダイアルアップの頃、ニフティは接続事業者として見えやすい位置にいたが、常時接続環境ではユーザーがニフティを意識することが少なくなった。そして、他の事業者がアクセル全開のスピードで飛ばし始めた時、巡航スピードを保ってしまったのではないかと感じました。だから、そこはきちんと認識を改めなくてはならない。
まず、お客様については、従来の「ニフティに接続するユーザーがお客様」という認識から、「インターネットユーザー全てがお客様」という認識に改めました。またCGM(Consumer Generated Media)というものは、やり方によっては収益になる。熾烈な競争があるが、そこにチャレンジをし続ける姿勢を堅持するよう、指示しました。一方でISP事業という安定基盤を持ちつつ、もう一方で非安定分野に常に挑戦し、そこをどう伸ばしきるかを考えているわけです。
例えばニフニフ動画はいわば世に問うたサービス。「あのニフティがパクリをやるのか!?」と思われたでしょう。しかし、「今度の社長が率いるニフティはここまでやるんだ」ということを社員にもお客様にもアピールすることになる。また、「Y or N」という広告宣伝活動を2007年夏に行っていたのですが、「Y or N」のYはYahoo!、NはNIFTYとも読め、さらに今までのインターネットにYesかNoかというのも問うています。非常に逆説的な宣伝かもしれないが、同業者の素晴らしさを認め、キャッチアップし、常にライバルであり続けるというメッセージなんです。

マリー秋沢・本谷:

後輩や若きビジネスパーソンに一言お願いいたします。

和田社長:

やはり「一心不乱」という言葉が好きですね。
「一心不乱に生きろ」。そう伝えて下さい。

マリー秋沢・本谷:

本日はどうもありがとうございました。

ニフティー 会社案内資料

ニフティ和田社長 プロフィール

1947年4月1日 東京都新宿区生まれ
1971年3月 上智大学法学部法律学科卒業
1971年4月 富士通株式会社入社
2003年6月 同社 経営執行役
(兼)流通・情報営業本部副本部長
2005年6月 同社 経営執行役
(兼)社会基盤ソリューションビジネスグループ副グループ長
(兼) 情報メディア事業本部長
2006年6月 富士通株式会社退社
ニフティ株式会社代表取締役副社長(兼)経営執行役副社長
2007年6月 同社 代表取締役社長(兼)経営執行役社長
[その他の質問]
身長 172cm
趣味 仕事、料理
座右の銘 「一心不乱」「Do the Best」「心は行動となり 行動は習癖を生む 習癖は品性を創り 品性は運命を決する」(京都大仙院の庭にある尾関宗園和尚の言葉)
尊敬する企業人 富士通 黒川博昭社長、秋草会長
最近買ったもの ブルーレイ
お薦めの本 「影武者」「徳川家康」「吉原御免状」「死ぬことと見つけたり」(以上 隆慶一郎)「信長の棺」(加藤廣)

〜マリー秋沢の一言〜

ニフティの社長にお会いする、ということでかなりの緊張感が漂う中、インタビューを通じてマリー秋沢、色々な学びをいただきました。最後に笑顔でお部屋を出て行かれた後、余韻が残る中、激化するIT業界の中で真のリーダーシップの意味を心得え、厳しさとやさしさを合わせ持ち、熱いハートで前進される和田社長の姿が強く印象に残りました。お忙しい中、貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

〜本谷隆光の独り言〜編集後記

常に真摯にお話しして下さる和田社長。誰もが知るニフティという企業を率いるリーダーのパワー、仕事や人生へのスタンス、そして後進への優しい想いを肌で感じる有意義な時間でした。いつでもしっかりと話し合い、綿密なコミュニケーションを何より重んじていらっしゃるのが伝わってきます。また、我々後輩にはとてもフランクに、そしてフレンドリーに接して下さり、そのとても温かいお人柄を実感しました。

今回のインタビューは、社会人のみならず、これから社会人を目指す学生の皆さんにとっても、大変有意義なお言葉を多々頂けたと思っています。そして新年第一回の経鷲会インタビューページとして、ここでしか見ることができない和田社長の素顔もお伝えできればと考えて編集しました。是非若い世代の皆さんに読んで頂きたいと願っています。特に学生の皆さんには、和田社長の言葉を胸に、真に充実した学生生活を送り、社会に羽ばたいてもらえたら大変嬉しく思います。

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