『なぐさめ』という仕事

銀座の真中にコンサートホールがあるのをご存知でしょうか。場所は三越デパートの裏手、王子製紙本社ビル内にある「王子ホール」がそれです。王子製紙がメセナ活動の一環として設立した席数315の小さなホールで、主催する公演は弦楽四重奏や歌曲など、クラシックの室内楽が中心。私は一昨年よりここに勤務しています。

上智大学在学中は比較文学、それも『能狂言の詩学』という浮世離れしたテーマに没頭していたせいか、恥ずかしながらリクルートスーツを着ての会社訪問まで思い及ばず、卒業後も学生時代にアルバイトとして始めた翻訳業を続けておりましたが、縁あってこの王子ホールで働くようになり、現在は企画室に所属しています。職場では宣伝物の制作やWebサイトの管理更新、また海外アーティストとの渉外なども担当しています。ちいさな所帯のため何役もこなさねばならないのが辛くもあり、楽しくもありといった毎日です。

「紛るることなきつれづれをもなぐさめ・・・」

なかでも一番の楽しみはコンサート当日。公演前のリハーサルでは国内外の一流アーティストの芸を間近に味わい、普段は表に出ないアーティストの素顔にも接することができます。演奏会の最中は舞台袖に控え、ときおり撮影用の小窓から様子を覗うのですが、演奏者の背後からコンサートを観られるのも裏方の特権といえます。分厚い扉を隔てた舞台裏まですさまじい集中力を感じさせる奏者もいれば、一曲終えたところで「靴を履き替えるの忘れてた!」と言い残し猛ダッシュで楽屋に戻る、若干注意力に欠ける奏者もいます。また客席へと目を転じると、一曲目から心地よさそうに熟睡なさる方や、上体をゆすって不規則なリズムな刻む方まで千差万別。そんななか目を輝かせて音楽に聴き入っていらっしゃるお客様も、もちろんいらっしゃいます。「紛るることなきつれづれをもなぐさめ・・・」とは光源氏の芸術(物語)論ですが、音楽に身を任せている数分、数十分の間は、イラク侵攻やローンや通り魔事件といったことを忘れられる。そしてそんなお客様の姿を見ると、自分が微力ながら『なぐさめ』の手助けをしているのだと感じることができ、報われる思いがします。

「なぐさめ」という仕事:柴田 泰正

王子ホールでは通常の演奏会に加え、音楽・朗読・歌・ダンスを融合させた3年連続上演の新しいホールオペラ「エレクトラ3部作」(経鷲会川野会長もお越しくださいました)や、フリードリンク制のクリスマス&ニューイヤー・コンサートなど、大人がくつろいで楽しめる場をご提供しようと様々な企画を実施しております。皆様も『なぐさめ』の時間を過ごしに、ぜひ銀座まで足をお運びください。

株式会社王子ホール企画室、経鷲会賛助会員)
王子ホール 中央区銀座4-7-5 
TEL:03-3567-9990(チケットセンター)
URL:http://www.ojihall.com/
(公演スケジュールのほか、私の書いたインタビュー記事も多数掲載されております。ぜひアクセスを!)

e-mail:masa.shibata@ojihall.com

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